フラーレンを含むシュンガイトの特性
1.シュンガイト石(Shungite)とは?
シュンガイト(Shungite)は、主にロシアのカレリア地方で産出される天然の炭素鉱石です。約20億年前に形成されたと考えられており、その構造には**フラーレン(C60などの分子状炭素)**が含まれているのが特徴です。フラーレンは非常に珍しい炭素構造の一つで、強力な抗酸化作用を持つとされています。フラーレンは、1996年に発見者がノーベル化学賞を受賞したことで知られ、抗酸化、抗菌、吸着などの特性が研究されています。
いくつかの科学研究では、シュンガイトの次のような効果が示唆されています:
①抗菌作用
シュンガイトは水中のバクテリアやウイルスを吸着し、不純物を取り除くことができます。
②抗酸化作用
フラーレンは強力な抗酸化物質として知られ、フリーラジカルを除去する能力が高いです。
③電磁波(EMF)シールド
一部の研究者は、シュンガイトが電磁波を吸収し、影響を減少させると主張しています。
📄 代表的な研究例
「シュンガイトの導電性と電磁波吸収」
研究者:M. Plotnikov(ロシア科学アカデミー)
内容:シュンガイトの導電性を測定し、**2.45 GHzの電磁波(Wi-Fi周波数)**に対して吸収効果を確認。
結果:シュンガイトは電磁波を約40~60%減衰させることが確認されました。
「電磁波による酸化ストレスの抑制」
研究者:M. Rozanova(ロシア、ペトロザヴォーツク大学)
内容:シュンガイトを用いて電磁波を暴露した細胞の酸化ストレスを測定。
結果:シュンガイトは酸化ストレスマーカーの減少に寄与し、電磁波の影響を軽減する可能性が示唆されました。
「電磁波シールド効果の実験」
機関:ロシアの鉱物研究所
内容:シュンガイト製のシールドケースを用いて、スマートフォンやWi-Fiルーターからの電磁波強度の減衰を測定。
結果:最大で70%の電磁波強度減少が確認されました。
2.フラーレン(Fullerene)とは?
フラーレン(Fullerene)は、炭素原子のみで構成されたサッカーボール状の分子構造を持つ物質です。最も有名な構造は、炭素原子60個が結合してできるC₆₀という球状の分子で、**「バッキーボール(Buckyball)」**とも呼ばれます。
1996年にハロルド・クロトー、リチャード・スモーリー、ロバート・カールの3人が、このフラーレンの発見によりノーベル化学賞を受賞しました。
フラーレンの構造と種類
フラーレンは炭素原子が五角形と六角形の組み合わせで形成された中空の多面体構造です。
フラーレンの種類 構造 特徴
C₆₀ 60個の炭素原子 最も一般的で、直径約0.7ナノメートル
C₇₀ 70個の炭素原子 C₆₀よりも楕円形
高次フラーレン C₇₂、C₈₄など 炭素原子の数が増えるほど構造が複雑になる
ナノチューブ 円筒状のフラーレン 電子材料やナノテクノロジーに利用される
グラフェン 平面状のフラーレン 2次元の炭素シート、次世代材料として注目
フラーレンの物理的・化学的特性
分子構造の安定性 フラーレンは非常に安定した球状分子構造を持つ
抗酸化作用 フリーラジカルを除去する能力が高い
半導体特性 電子を受け渡す性質があり、電気伝導性がある
疎水性 水には溶けにくいが、有機溶媒に溶けやすい
ナノサイズ 1ナノメートル(10億分の1メートル)レベルの大きさ
フラーレンの応用分野
① 医療分野
フラーレンの抗酸化作用により、次のような医療応用が期待されています:
抗酸化剤 フリーラジカルを中和し、老化を抑制する効果
ドラッグデリバリー 薬物の送達システムとして利用
抗ウイルス作用 一部の研究でHIVやC型肝炎ウイルスの抑制効果
②化粧品分野
フラーレンは、シワ防止、肌のハリ回復、抗酸化作用を目的とした化粧品成分としても利用されています。
紫外線によるダメージの軽減
美白効果
抗炎症作用
③ 電子材料・ナノテクノロジー
リチウムイオン電池の性能向上
有機太陽電池の効率化
トランジスタや超伝導体への応用
④ 環境分野
水の浄化
フラーレンは有害物質を吸着する特性があり、水処理や土壌浄化に利用されます。
⑤電磁波シールド
フラーレンを含む材料が、電磁波の吸収や遮蔽に使用されています。
がん治療への応用
フラーレンを利用した光線力学療法(PDT)が研究されています。
がん細胞にフラーレンを取り込み、特定の波長の光を当ててがん細胞を破壊する技術です。
抗ウイルス効果
COVID-19などのウイルスに対する抗ウイルス作用を持つフラーレンの研究が進行中です。
・日本医科大学の研究: 中村成夫教授らは、フラーレンに水溶性の置換基を付加したフラーレン誘導体を開発し、HIVやC型肝炎ウイルスに対する逆転写酵素やプロテアーゼの阻害効果を確認しています。さらに、これらの知見を基に、新型コロナウイルスのメインプロテアーゼに対する阻害活性を持つフラーレン誘導体の開発にも取り組んでいます。
・慶應義塾大学の研究: 片岸大紀氏の博士論文では、COVID-19治療薬としてのフラーレン誘導体の開発が報告されています。具体的な内容は公開されていませんが、フラーレン誘導体の医薬品応用に向けた研究が進められています。