ペット腸サミット2025⑲
The GI Tract: What’s An Optimal Diet for Dogs?
Dr. Conor Brady
犬の消化管 ― 最適な食事とは?
ペットフード売り場で「グレインフリー」「ナチュラル」「子犬用」などの表示に囲まれると、どれが最適なのか迷う人は多いでしょう。
犬は単なるペットではなく、独自の栄養的ニーズを持つ存在です。その理想的な食事を理解するには、彼らの肉食動物としての起源に立ち返る必要があります。
1. 犬の祖先と食性
犬はオオカミと約4万年前に分岐し、遺伝的に非常に近い関係にあります。オオカミやディンゴのような野生の犬科動物は、獲物を捕らえて肉・臓器・骨を食べる高タンパクな食事をとっています。そのため、犬の消化器は肉食に適応しており、炭水化物の消化は苦手です。
犬の歯は鋭く尖っており、肉を裂くのに適しています。消化管も短く、動物性タンパク質の吸収に向いています。
要点:
犬は肉食の祖先を持ち、タンパク質と脂質の代謝に優れています。炭水化物の消化は弱いため、肉中心の食事が理想です。
2. 高炭水化物食のリスク
現代の犬における肥満の増加は、炭水化物過多の食事が一因です。
炭水化物は体内で糖に変換され、運動で消費されない分は脂肪として蓄積されます。
また、インスリン抵抗性、膵炎、がんリスクの増加など、さまざまな疾患の引き金にもなります。
要点:
炭水化物の摂りすぎは肥満、糖代謝異常、膵炎、がんなどのリスクを高めます。
3. ペットフード業界の問題点
「プレミアム」「グルメ」などの表示は米国飼料管理協会(AAFCO)によって規制されておらず、単なるマーケティング用語に過ぎません。
AAFCOの基準も「最低限の栄養要件」を示すもので、「最適な栄養」を保証するものではありません。
また、サルモネラ菌やアフラトキシンなどによる汚染リコール事件も多く報告されています。
要点:
ラベル表示や認証を鵜呑みにせず、成分を確認し、品質に注意する必要があります。
4. 犬に適した食事を選ぶには
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栄養要件の理解:
犬はタンパク質、必須脂肪酸、ビタミン、ミネラルをバランスよく必要とします。
栄養士による個別設計が理想です。 -
年齢別:
子犬は成犬より多くのタンパク質と脂質を必要とし、シニア犬はカロリーを抑え、関節を守る栄養素(グルコサミン、オメガ3など)が重要です。 -
犬種サイズ:
小型犬は代謝が速くエネルギーが必要、大型犬は骨や関節の成長を考慮した食事が必要です。 -
生食(Raw Food)議論:
賛成派は祖先的食事に近いとし、反対派は細菌汚染や栄養バランスの偏りを懸念しています。
5. 結論
犬に最適な食事を見つけるのは簡単ではありません。
しかし、祖先的な肉中心の食事が基本であり、高炭水化物食や加工食品には注意が必要です。
犬のライフステージや健康状態に合わせた食事選びを行い、専門家に相談することで、犬の健康と活力を最大限に引き出すことができます。
