ビタミンDと制御性T細胞(Treg)──免疫を「整える」ホルモンの役割

■はじめに

ビタミンDは「骨の健康」に必須の栄養素として知られてきたが、近年では免疫調整ホルモンとしての役割が注目されている。特に、自己免疫疾患・炎症性疾患、そして癌との関係において制御性T細胞(Treg)との密接な関連が明らかになりつつあります。本記事では、ビタミンDとTregの関係を最新研究に基づき解説し、「その摂取が免疫バランスにどのような影響を及ぼすか」を整理します。

 

■ 制御性T細胞(Treg)とは何か?

TregはFoxP3を発現するCD4⁺T細胞であり、免疫応答を抑制・制御する役割を担っています。
過剰な炎症や自己免疫反応を防ぎ、「免疫のブレーキ役」として働きます。

活性型ビタミンD(1,25(OH)₂D₃)は、Tregの分化・機能強化を促進します。

腸は全免疫細胞の約70%が存在する最大の免疫器官であり、ビタミンD受容体(VDR)は腸管Treg細胞で強く発現しています。

 マウス研究では、VDR(ビタミンD受容体)欠損マウスで腸管Tregが著しく低下し、腸炎が悪化したことが確認されている。

 癌「予防目的」ではTreg増加は有益に働く可能性が高いと考えられる。
 癌「治療中(特に進行癌)」では、過剰なTreg誘導は免疫逃避の助長となる可能性がある。

 

■ 血中25(OH)D濃度と免疫調整の理想域

多くの研究でビタミンDが最も免疫調整効果を発揮するのは40〜60 ng/mLとされています。

 補充する際は、血中濃度の測定が前提となります。

 

■ビタミンDは栄養素ではなく“免疫ホルモン”として機能する

制御性T細胞(Treg)を誘導・強化し、炎症性疾患・自己免疫・腸炎に有益に働きます。

一方で腫瘍免疫においてはTreg増加が逆効果となる可能性があります。

真の臨床応用には 「血中濃度の測定」と「病態に応じた使い分け」 が必須となります。