ペットオゾンサミット2025④
一緒に取り組もう:オゾンで変える馬医療の新しいパラダイム
メイシー・ワイザー先生
1. 馬の獣医不足とシステムの崩壊
-
現在、馬専門の獣医師が深刻に不足しており、特に地方では治療を受けられないケースが増えている。
-
その背景には、訴訟リスクや規制、過度に硬直した医療制度があり、「新しい治療法を試す余裕がない」ことが問題。
-
飼い主やトレーナーが獣医師を後押しし、オゾン療法に関心を持ってもらうことが鍵と強調。
>「この変化は現場から起こる。オーナーが学び、獣医を励ますことが第一歩。」
2. 競走・持久馬における規制と課題
-
レースや耐久競技では「ドーピング規制」が厳しく、酸素系治療までも制限対象になる。
-
馬の**心拍回復率(Heart Rate Recovery)**が競技継続の重要な指標。
- 競技中に30分以内に心拍が60bpm以下に戻らない場合は失格。 -
オゾン療法は筋肉疲労や骨折リスクを減らす可能性があり、競技馬の健康維持に貢献できるが、規制の壁が大きい。
-
「症状を治す医療」から「環境と代謝を整える医療」への転換を呼びかけ。
3. 生理学的背景:オゾンとエネルギー代謝
-
心臓や筋肉はミトコンドリアが豊富で、酸素利用効率が健康の鍵。
-
オゾンは酸化ストレスを適度に刺激して抗酸化酵素を活性化し、
→ エネルギー産生、循環改善、免疫調整を促進。 -
持久馬では、心拍回復が「ミトコンドリア機能の指標」として使える。
4. オゾン化グリセリンによるネブライザー療法(講演の中心テーマ)
● 概要
-
オゾン化グリセリンは、オゾンをグリセリンに安定結合させた水溶性の形態。
-
直接オゾンガスを吸入する危険性がなく、安全に呼吸器へ届けられる。
-
人間や小動物でも安全性が確認されており、馬への応用が急速に進んでいる。
● 適応と方法
-
主な対象:炎症性気道疾患(IAD)
(競走馬の70〜80%に発生) -
使用法:
- オゾン化グリセリン1:蒸留水9(約10%希釈)で混合
- ネブライザーで吸入(1日1〜2回または週数回)
- 初回は1%程度から開始し、徐々に濃度を上げる -
機器例:
- Flexineb®ポータブルネブライザー
- 小動物にはハンディ型 -
利点:
- ドーピング検査に引っかからない
- 自宅や厩舎で簡単に使用可能
- 空気中オゾンを発生させず安全
5. その他の臨床応用例
| 症例 | 使用法 | 補足 |
|---|---|---|
| EPM(馬の原虫性脳脊髄炎) | オゾン化グリセリン静注 | 抗真菌薬との併用。免疫賦活・回復補助。 |
| メラノーマ・扁平上皮癌 | 局所注射(+プロカイン) | 局所炎症抑制と壊死防止。 |
| 蹄のスラッシュ(カビ性潰瘍) | オゾン化グリセリン湿布・浸漬 | 砂糖湿布の代替として安全。 |
| 涙管炎・目の感染 | 希釈オゾン化グリセリンをガーゼに含ませ外用 | 高張すぎる原液は刺激強いため要希釈。 |
6. 安全性と実践のポイント
-
オゾンガスを直接吸入してはならない。
必ずグリセリンや水を介して安定化する。 -
初回は低濃度で開始し、様子を見ながら増量。
-
酸素ボンベは工業用でも代用可(入手容易)。
-
多くの獣医師が「非標準療法」への不安を持つため、
飼い主の理解と同意、責任書面(waiver)が重要。
7. メッセージとパラダイム転換
-
「一緒にやろう」― オーナー・トレーナー・獣医の協働
-
安全・簡便・費用対効果が高い治療としてオゾン療法を広める。
-
獣医不足を補うオーナー主導のケアモデルを提唱。
-
呼吸器・環境・代謝・酸化ストレスを包括的に捉える医療へ。
-
未来の馬医療=“予防・環境・酸素・オゾン”の融合。
8. 結論
-
オゾン化グリセリンの導入は、馬医療の安全性と持続可能性を高める革命的技術。
-
オーナーが環境と呼吸器ケアを改善することで、治療依存から「自立した予防医療」へ移行できる。
-
最後に演者は次のように締めくくった:
>「獣医師不足の時代だからこそ、私たちが力を合わせて安全で効果的なオゾン療法を広めることが必要です。」
