ペットオゾンサミット2025⑥
ホールフード栄養とオゾン療法の相乗効果
スチュワート・ケイ 米国動物看護師
■ 講演の概要
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統合医療(例:オゾン療法)を効果的に働かせるには、まず「ホールフード栄養」が基盤となる。
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遺伝子は設計図のようなもので、食事という環境要因によってその発現が左右される。
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ニュートリゲノミクス(nutrigenomics)の観点から、犬の個体差に合わせた栄養調整が必要。
■ 食事と遺伝子・炎症・ミトコンドリア
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食べ物は「燃料」ではなく「情報」であり、細胞の代謝・再生・酸化還元バランスを制御する。
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オゾン療法と同様に、適切な栄養は酸素利用効率やRedoxバランスを改善する。
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特にオメガ3脂肪酸は抗炎症性であり、皮膚炎や関節炎に有効。オメガ6とのバランスが重要(理想は6:1以下)。
■ 犬の生理構造から見た食事
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犬は肉食寄りの雑食動物であり、歯の形状や消化酵素(唾液アミラーゼ欠如)からも穀類消化に適していない。
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消化管が短く、炭水化物の消化吸収には不向き。
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そのため生肉・内臓・骨を中心とした食事(RawやBARF)が理想的。
■ 栄養バランスの指標
| 食事タイプ | タンパク質 | 脂肪 | 炭水化物 |
|---|---|---|---|
| 生肉ベース(Ancestral 6X) | 約49% | 約45% | 約6% |
| ドライフード(Kibble) | 約25% | 約32% | 43〜65% |
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犬には炭水化物の必須摂取量はゼロ(AAFCO基準でも同様)。
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炭水化物は「押し出し成型」のために必要であり、栄養目的ではない。
■ フィーディングスタイルの3種
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Prey Model Raw(80/10/10)
80%筋肉、10%骨、10%臓器。野生の捕食構成を模倣。 -
BARF(Biologically Appropriate Raw Food)
上記に10%の果物・野菜を追加。 -
Real Ancestral 6X Diet(推奨)
筋肉63〜65%、骨10〜12%、臓器10%、魚介10%、繊維5%。
→ オメガ3補給として小魚(イワシ、サーディン等)、またはニュージーランド産緑イ貝を推奨。
■ 六大疾患とホールフード栄養
Feed Real Instituteが特に重視する6つの疾患:
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歯周病
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2歳で75〜85%の犬に発症。
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ドライフードでは予防できず、生骨による咀嚼刺激と口腔プロバイオティクスが有効。
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慢性皮膚炎・外耳炎
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オメガ3/6バランス、ビタミンA・E、銅・亜鉛の不足が関与。
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オゾン外耳療法も有効(講師自身の犬も耳トラブルに悩むと述べた)。
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関節疾患(CCL断裂など)
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緑イ貝、鶏足、軟骨、トラケアなどの天然コラーゲン源。
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マンガン不足にも注意。
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肥満
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米国では59%が過体重または肥満。
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ケトジェニック寄り(高脂肪・中タンパク・低糖質)食で減量。
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消化器障害(下痢・嘔吐)
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プレーンターキーやボーンブロス、マシュマロルート・スリッパリーエルムで整腸。
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がん
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犬の3頭に1頭が発症、10歳以上では半数。
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軟骨(cartilage)は血管新生阻害作用(抗腫瘍性)を持つ。
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ケトン代謝を促す高脂肪食が腫瘍増殖抑制に有効。
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■ 高齢犬・猫・特殊ケースへの対応
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高齢犬:軽く調理した食事(gently cooked)が消化に優しい。
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魚アレルギー:貝類・牡蠣・草飼牛肉・チアシードなどで代用。
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肝臓由来トキシンの懸念:有機飼育動物の臓器を使用。
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猫の移行法:ドライ→缶→生食の段階的切り替え。
■ 結論
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「食事は薬であり、遺伝子のスイッチを変える情報である」。
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適切な栄養はオゾン療法・再生療法などの効果を最大化し、
犬の寿命(longevity)と健康寿命(healthspan)を延ばす。
