ペット腸サミット2025⑥

ホリスティック栄養で愛犬の健康を変える

The Canine Wellness Blueprint』(Dr. Susan Bohrer 著)は、東洋医学(TCVM)の理論と現代獣医学を融合した犬の食事療法の実践ガイドである。テーマは「Food is Medicine(食は薬なり)」。著者は、食事が犬の体質・感情・健康寿命に深く関わることを科学と経験の両面から解説している。

■ 現代ドッグフードの問題点

市販のキブル(ドライフード)は高温加熱と保存料によって栄養素が失われ、慢性炎症・肥満・糖尿病・がんなどのリスクを高める。特に「グレインフリー」も例外ではなく、加工糖質が健康を損ねる根本原因とされる。

■ 新鮮な食材とホールフードの力

新鮮で調理された食事は抗酸化物質と酵素を豊富に含み、免疫機能と代謝を高める。低GIの穀物や野菜を組み合わせた手作り食や、TCVMに基づいた五行理論(木・火・土・金・水)による体質別食事法が推奨される。

■ 五行別の食療法(Chi Dogプログラム)

Dr. Bohrerが提唱するChi Dogの五行食は、犬の疾患や体質に応じて次のように分類される。

エレメント 主な疾患・体質 特徴的食材 目的
木(Wood Diet) てんかん・肝臓疾患 鶏肉・玄米・野菜 抗炎症・神経安定
火(Fire Diet) クッシング症候群・不安症 七面鳥・枝豆・ブロッコリー 熱を冷まし感情安定
土(Earth Diet) 肥満・消化不良 鶏胸肉・サツマイモ・カボチャ 代謝促進・消化強化
金(Metal Diet) 皮膚疾患・代謝低下 牛赤身肉・セロリ・白ジャガイモ デトックス・呼吸循環改善
水(Water Diet) 腎疾患・関節炎 鶏肉・サツマイモ・玄米 腎サポート・炎症抑制

■ 疾患別の実践例

  • てんかん:高糖質食品を避け、Wood Dietで肝機能を整え神経の安定を図る。

  • クッシング症候群:Fire Dietでホルモン過剰反応を鎮め、代謝を正常化。

  • 腎臓病:Water Dietが低リン・高品質タンパクで腎負担を軽減。

  • 関節炎:オメガ3と抗酸化野菜を中心に炎症を抑える。

  • 肥満:Earth/Metal Dietで「湿・痰」を除き代謝を促進。

  • 不安症:Fire Dietで体を冷やし、神経興奮を沈静化。

  • 皮膚アレルギー:熱と風を鎮めるFire Dietで炎症を軽減。

  • がん:低炭水化物・高タンパク・抗酸化中心のEarth/Metal食でQOLを改善。

■ 食事療法の実践ポイント

  • 切り替えは7日間かけて段階的に行う。

  • 高GI炭水化物や人工添加物を避ける。

  • 手作り食の場合は獣医師またはTCVM専門家の監修を受ける。

  • 食事に加えて、鍼灸・アロマ・CBD・軽運動などの補完療法も有効。

■ 結論

本書が伝えるメッセージは明快である。

「食べることは癒すこと(To eat is to heal)」

犬の健康は、薬やサプリメントよりもまず「毎日の食事」から始まる。
ホリスティックな視点で体と心を整えることこそが、長寿と幸福を支える鍵である。