ペット腸サミット2025⑩
犬のリーキーガットを癒すための食事戦略
―フード感受性テストで作る個別栄養プラン―
著者:Dr. Ruth Roberts(獣医師/ホリスティック・ペットヘルスコーチ)
1. リーキーガットとは何か
犬の「リーキーガット症候群(腸漏れ症候群)」は、腸粘膜が損傷して有害物質が血流に漏れ出すことで、慢性炎症や全身性疾患を引き起こす状態を指します。
腸は単なる消化器官ではなく、免疫システムの要でもあり、健康維持に重要な役割を果たします。
主な症状
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皮膚のかゆみ、耳の感染、アレルギー、肛門腺トラブル
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下痢や便秘などの消化不良
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行動変化(ストレス反応や不安など)
Dr. Roberts は「腸の健康は犬の行動や免疫の状態にも直接影響する」と強調しています。
2. リーキーガットを悪化させる要因
■ 食事の影響
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加工食品やアレルゲン(牛肉・乳製品・小麦グルテンなど)は腸壁を損傷し、慢性炎症を誘発する。
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食事バランスの乱れや過剰な炭水化物摂取も腸内細菌叢のバランスを崩す。
■ 薬剤と加齢
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NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)やフィラリア・ノミダニ薬などの長期使用は腸の防御機能を低下させる。
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老齢犬では免疫力が低下し、腸の修復力も衰える。
まとめ:
誤った食事と薬剤の影響は腸粘膜を損傷し、炎症と免疫異常を招く。
3. 他の疾患との関連性
■ 自己免疫疾患との関係
腸内バリアが破壊されると、異物が血中に侵入し、免疫反応が暴走。
結果として関節炎や自己免疫性疾患を発症しやすくなる。
■ 炎症性腸疾患(IBD)との関係
腸の炎症が長期化すると、下痢・嘔吐・栄養不良を招く。
Dr. Roberts は「腸の炎症が悪化すると免疫細胞が過剰反応し、慢性疾患を悪循環的に悪化させる」と述べています。
4. フード感受性テストの重要性
■ テストの目的
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どの食材が犬に炎症反応を起こしているかを特定する。
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一般的な原因食材:牛肉、乳製品、鶏肉、小麦グルテン。
■ カスタマイズされた食事プラン
テスト結果に基づき、アレルゲンを排除した「個別食事プラン」を作成。
これにより腸壁の修復と腸内細菌の正常化を促進し、全身の炎症を抑えることができる。
要点:
感受性テストで「炎症を起こす食材」を避けることが、リーキーガットの根本治療の第一歩となる。
5. まとめと提言
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リーキーガットは食事、薬剤、加齢が複雑に関与する全身性疾患。
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皮膚炎やアレルギー、行動変化も腸の問題から生じることがある。
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早期発見と食事改善が健康回復の鍵。
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フード感受性テスト+個別食プラン により、腸粘膜を修復し、免疫のバランスを取り戻せる。
