ペット腸サミット2025⑪

犬の皮膚疾患を治す鍵:腸と栄養からのアプローチ

Dr. Katie Woodley(自然療法獣医師/The Natural Pet Doctor)


1. 腸と皮膚のつながり ― 「ガーデンモデル」で考える健康

Dr. Woodley は、犬の体を「庭(ガーデン)」に例えます。
腸(gut)は「土壌」、皮膚は「植物」。
もし土壌が毒素や栄養不足、ストレスで荒れていれば、植物(皮膚)は枯れ、病気になります。

腸の健康は、皮膚の健康と直結しています。
腸内細菌(マイクロバイオーム)はホルモン、ビタミン、神経伝達物質、短鎖脂肪酸などを産生し、これが免疫系や皮膚にまで影響を及ぼします。
特に「腸―皮膚軸(gut–skin axis)」は双方向に作用し、腸内の炎症やバランスの乱れ(ディスバイオシス)が皮膚病変を悪化させます。


2. 慢性皮膚炎の根本原因 ― 腸内環境の乱れ

アトピー性皮膚炎や慢性的なかゆみの背景には、多くの場合「腸の炎症」や「リーキーガット(腸漏れ)」があります。
原因となるのは以下の要因です。

  • 遺伝子組み換え作物やグリホサート(ラウンドアップ)

  • 加工食品や添加物

  • 抗生物質や薬剤の多用

  • 精神的ストレス

  • 環境毒素(洗剤・香料・農薬など)

腸粘膜のバリアが破壊されると、免疫が過剰に刺激され、皮膚炎やアレルギー症状が現れます。


3. 食事がもたらす真の治癒力

Dr. Woodley は、「栄養が最良の薬」と強調します。
犬の毛の構造の65〜95%はタンパク質で構成され、摂取タンパク質の30%が皮膚・被毛の再生に使われます。
長期間、栄養的に不十分な加工食(ドライフードや処方食)を与えると、必ず皮膚トラブルが現れます。

典型的な問題点:

  • 処方食は「短期的使用」しか想定されていない

  • 栄養素が乏しく、合成ビタミンやミネラルで補っている

  • 長期給餌で亜鉛、ビタミンE、オメガ脂肪酸などが欠乏

  • 熱加工によるタンパク質の変性でアレルギー反応を誘発

おすすめの食事:

  • 加工度の低い生食(ローフード)、フリーズドライ、または軽調理食

  • 炎症体質には「冷性たんぱく質」:ターキー、ダック、ラビット、タラなど

  • 腸を整える野菜やハーブ:スイートポテト、ビート、マッシュルーム、ブロッコリー、オレガノ、ターメリックなど

  • 発酵食・トライプ・食物繊維(イヌリン、サイリウムハスク)による腸内細菌サポート


4. 栄養素ごとの「庭の肥料」としての役割

栄養素 役割 欠乏症状
オメガ3脂肪酸(EPA/DHA) 炎症抑制・皮膚のバリア機能維持 かゆみ、フケ、炎症の悪化
ビタミンE 抗酸化・細胞保護(オメガ3と併用が理想) 鼻や耳の潰瘍、乾燥、皮膚炎
亜鉛 免疫・皮膚再生・ホルモン調整 脱毛、潰瘍、慢性皮膚炎
食物繊維(プレバイオティクス) 善玉菌のエサ・腸の運動を整える 消化不良、便通異常

自然食材としては、サーモン、放牧牛肉、カボチャ、ひまわり種、レバー、牡蠣などが推奨されています。


5. デトックスとストレスケアの重要性

健康な皮膚を保つためには、体内解毒と感情の安定も欠かせません。

デトックスを助ける食品・ハーブ:

  • ミルクシスル(肝臓保護)

  • ダンデライオンルート・バードックルート

  • ブロッコリー・ケールなどのアブラナ科野菜

  • フルボ酸・フミン酸(重金属排出)

ストレス緩和法:

  • CBD・カモミール・バレリアンティー

  • 飼い主と犬のリラックスタイムを共有する

  • 瞑想・呼吸法で自律神経を整える

「ストレスを抱えた犬は、食事だけでは治らない」というのが彼女の強調点です。


6. 回復のための5つのステップ

  1. 加工食品を減らし、自然食へ移行する

  2. 腸をプレバイオティクスと繊維で養う

  3. 毒素(化学物質・過剰サプリ)を排除する

  4. ストレス・感情面のバランスを整える

  5. 食事日誌をつけ、変化を記録する


7. 結論 ― 腸を整えれば皮膚は治る

腸、免疫、皮膚、感情、環境はすべてつながっています。
食事を見直し、腸を癒やすことで、犬の皮膚疾患は「抑える」のではなく「治す」方向へ向かう。
Dr. Woodley は、「栄養が最大の治療薬である」というヒポクラテスの言葉を再確認すべきだと締めくくっています。