ペット腸サミット2025⑫

犬の治癒のための最良の栄養食

Dr. Judy Morgan(ジュディ・モーガン獣医師


1. 栄養の基礎 ― 「生きる」ではなく「繁栄する」ために

モーガン博士は「犬はただ生き延びるだけでなく、繁栄すべき」と強調。
1970年代にはゴールデン・レトリバーの平均寿命は17歳だったが、現在は10歳程度。
その差の主因は「低品質で加工されたペットフード」。
目指すべきは、人間が食べるのと同等の「ヒューマングレードの食材」による食事である。


2. 加工フードとレンダリングの危険性

  • レンダリング:死んだ動物(犬・猫・家畜・道路死体など)を大釜で煮て「ミール」や「動物脂」に加工する工程。
    → これには**安楽死薬(ペントバルビタール)**が残留することが多い。

  • 発がん性防腐剤:BHA、BHT、エトキシキンなどが使用され、体内に蓄積して肝障害を引き起こす。

  • トウモロコシ・豆類:カビ毒(アフラトキシン)による肝不全リスクがある。


3. キブル(ドライフード)の実態

  • 高温高圧の**押出成形(extrusion)**工程で栄養が破壊される。

  • 仕上げにスプレーされる「動物脂」はすぐに酸化・劣化し、アレルギーや炎症を悪化させる。

  • 長期間保管したドライフードは**ダニ汚染(ストレージマイト)**を起こし、アレルギーを誘発。

  • 保管するなら袋のまま密閉し、3〜4週間以内に使い切ること


4. 個別化された食事設計

  • 「犬種別の理想食」は存在しない。年齢・疾患・体質ごとに個別対応が必要。

  • 穀物は必須ではない。肉中心の食事が理想。

  • DCM(拡張型心筋症)問題は肉不足が原因。タウリンを多く含む肉(特に心臓)を十分に与える。

  • アレルギーの多いタンパク質:鶏肉・牛肉。


5. 加工フードを少しでも改善する方法

完全手作りが難しい場合でも、
**トッピング(フードの上に加える)**で寿命が30%延びるという研究あり(パデュー大学)。

おすすめのスーパーフード:

  • 卵(生でも加熱でもOK)

  • ケール・ブルーベリー

  • サーディン(イワシ)・サーモン

  • カボチャ(整腸)

  • ハチミツ(特にマヌカハニー)

  • 骨軟骨部分(グルコサミン源)


6. 食養生(Food Therapy)

中医学の「陰陽」理論を応用し、体質に合わせた食事で病気を防ぐ。

  • 陰(冷・潤):熱っぽい犬に。例:スイカ、キュウリ、魚など

  • 陽(温・乾):冷え性の犬に。例:ラム、鶏肉、ショウガなど

  • 肝・腎・心・脾など五臓のバランスを考慮し、薬に頼らず自然治癒力を高める。


7. バランスとサプリメント

完全手作りにする場合は栄養バランスが必須。

  • 単なるマルチビタミンでは不十分。

  • 「全食材由来の栄養補助食品(Whole Food Supplements)」を使用すること。

  • 初心者向けには「Home-Prepared Dog Food 101」などの学習を推奨。


8. 飼い主も健康になる

飼い犬の手作り食を始めた飼い主夫婦が、自分たちの食事も改善し体重を170ポンド減らしたという例も紹介。


9. 実践のアドバイス(まとめ)

  1. できる限り「本物の食材」を与える。

  2. ラベルを読む習慣をつける。

    • 値段だけでなく「1ポンドあたりの実質価格」と原材料を比較。

    • 「ビーフ味」でも3番目にチキンが入っていることがあるため要注意。

  3. 少しずつでも変えることが大切。
    例:卵1個、サーディン1匹から始める。