ペット腸サミット2025⑯
食は最初の薬 ― 犬のためのフードセラピー
スーザン・ボーラー博士(Dr. Susan Bohrer)
伝統的な中国獣医学(TCVM)に基づく「フードセラピー(食事療法)」は、犬の健康を改善する強力な手段である。
加工フードの「完全栄養」表示とは裏腹に、実際は空カロリーに近いものが多く、活力を失わせる要因にもなる。
東洋医学の原理に基づくフードセラピーでは、犬の体質(構成タイプ)に応じて「温性食品」「冷性食品」を使い分け、エネルギーバランスを整える。
1. 食を薬とする哲学
食べ物は単なる栄養源ではなく、**身体を整え、疾病を防ぐ“薬”**でもある。
生姜が胃を温め、ニンニクが免疫を高めるように、犬においても食材の「エネルギー特性」を理解して利用することができる。
2. 五行理論とフードセラピー
五行(木・火・土・金・水)理論は、それぞれ特定の臓器や感情と結びつく。
犬の体質や症状に合わせ、五行のバランスをとる食材を選ぶことで、内臓機能や感情面も整えることができる。
3. 犬の体質(構成タイプ)の見極め
犬を「熱性・寒性」「活発・おっとり」といった特性から分類する。
| タイプ | 特徴 | 傾向 |
|---|---|---|
| 土(Earth) | 大柄、胃腸が弱い | 消化器疾患 |
| 金(Metal) | 落ち着き、皮膚敏感 | 皮膚トラブル |
| 水(Water) | 体力がある | 腎・骨の問題 |
| 木(Wood) | 活発・敏捷 | 肝臓・ストレス系 |
| 火(Fire) | 社交的・多動 | 心臓疾患や不安 |
例:ラブラドール=土タイプ、プードルやテリア=火タイプ。
4. 食材のエネルギー ― 温と冷のバランス
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冷性食品(例:バナナ)
炎症や「熱のこもり」に効果的。夏や炎症体質の犬に。 -
温性食品(例:鶏肉、ショウガ、ハバネロ)
冷え性や高齢犬の体を温め、血流を促す。
重要なのは「偏らずにバランスをとること」。
温・冷のどちらか一方に傾くと不調を招くため、時期や体調に応じて調整する。
5. 加工フードの問題点
多くのドッグフードはフィラーや添加物が多く、炎症性疾患や肥満の原因になり得る。
一方で、自家調理やフリーズドライ・非加工の食材を使うことで、酵素や栄養素がより自然に摂取できる。
ただし、食事変更は獣医師または栄養学専門家の監修のもとで行うべき。
6. バラエティの重要性
犬も人間と同じく、多様な食材を摂ることで腸内環境や免疫が整う。
ビーフレバーにはビタミン群、サーモンにはオメガ3脂肪酸など、食材ごとに異なる栄養素がある。
キブル(ドライフード)だけに頼らず、トッピングや手作り食で変化をつけるとよい。
7. 結論
「食は薬である」という東洋的視点を取り入れることで、犬の健康をより深く理解できる。
体質に応じて温冷のバランスをとり、加工フードを減らし、ホールフード(自然食)を中心とした食事を整えることで、自然治癒力を高め、病気を予防できる。
