ペット腸サミット2025⑳

生食(Raw Food)を始めるためのヒント

Nick Thompson先生

1. 自己紹介と活動

Nick Thompson 博士は35年以上の獣医経験を持ち、そのうち25年以上を犬猫の生食栄養に携わってきた。
彼は「Raw Feeding Veterinary Society」の創設者であり、ヨーロッパやニュージーランドなど世界各地で講演。
ホメオパシー・自然栄養・ハーブ療法を組み合わせたホリスティック獣医として活動している。

2. 生食導入の心構え

  • 「怖がらないで始めよう」
    初めての人は誰でも不安を感じるが、正しい情報を得れば安全で簡単にできる。

  • 「生食は思ったよりもシンプル」
    栄養バランスは毎食ごとではなく、1〜2週間単位で考える。
    冷凍されたミンチ肉を解凍して与えるだけで十分。

3. よくある誤解と真実

誤解 真実
生食は汚くて危険 適切に管理された冷凍生肉なら安全。清潔な調理と手洗いで問題なし。
バランスが取れない 食事の総体でバランスを取ればよい。自然界でも「完全食」は存在しない。
菌が危険(サルモネラなど) 科学的根拠は乏しく、感染リスクは極めて低い。むしろドッグパークの泥の方がリスクが高い。
旅行やキャンプ時に不便 冷凍・フリーズドライ・缶詰など多様な選択肢がある。
軟便になりやすい 実際は逆で、硬くて片付けやすい便になることが多い。

4. 獣医との付き合い方

多くの獣医は生食に懐疑的だが、科学的根拠は少ない。
ヒルズやロイヤルカナンなど大手企業の過去のリコール(ビタミンD過剰・メラミン混入など)を考えると、
「加工フードの方が安全」とは言えない。
理解のある獣医を探すか、Dr. Conor Brady著『Feeding Dogs』などを参考資料として共有するとよい。

5. 実際の始め方

  • 最初の1〜2か月は「完全フードタイプの生食」を選ぶ(骨やトッピングは後からでOK)。

  • 英国では「ProDog」「Benepet」、米国では「Iron Will Raw」「Big Country Raw」などが良質なメーカー。

  • 徐々に体が慣れると消化や毛艶、便質が改善。

6. 移行方法(トランジション)

  • 即日切替(Cold Turkey):健康な犬なら即日移行でOK。

  • 4日間法:1日目25%、2日目50%、3日目75%、4日目で完全移行。

  • 食べないときの対処

    • 温める/ボーンブロスをかける

    • 軽く火を通してから徐々に生に戻す

    • タンパク源を変更する(牛→鶏→ラム→魚など)

    • 24時間の短期断食(※猫は絶対に不可)

7. 骨と口腔の健康

生骨(適切な種類・サイズ)を噛むことで歯石が減り、口腔疾患が少ない。
精神的な満足感(咀嚼によるストレス解消)も大きい。

8. 最後のメッセージ

「最も大切なのは、あなたとペットが“楽しむこと”です。
楽しめていれば、必ずうまくいきます。」