ペット腸サミット2025㉔
キノコ(特にライオンズメインとチャーガ)を活用して犬猫の腸内環境とリーキーガットを改善する方法
獣医師ロブ・シルバー博士
1. 腸の役割とリーキーガット
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腸は「栄養吸収」と「毒素・病原体の防御」という2つの機能を持つ。
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ストレス・薬剤・抗生物質・加工食品などが腸粘膜のタイトジャンクションを破壊し、**リーキーガット(腸漏れ)**を引き起こす。
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腸の表面積は**テニスコート1面分(約340㎡)**にもおよび、体の最大の免疫器官でもある(免疫の70%が腸に存在)。
2. 腸内防御の4つのメカニズム
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消化酸・酵素・蠕動運動
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粘液層(抗体IgAが存在)
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上皮細胞のタイトジャンクション
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腸内細菌叢(マイクロバイオーム)
これらが壊れると、慢性炎症・自己免疫疾患・アレルギー・がんの温床になる。
3. 「4Rアプローチ」で腸を修復
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Remove(毒素・病原体の除去)
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Repair(粘膜の修復)
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Replace(消化酵素の補充)
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Reinoculate(善玉菌の再植)
4. キノコの力:β-グルカン、キチン、テルペン
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β-グルカン:免疫細胞(マクロファージ等)を活性化し、病原体防御と抗腫瘍効果をもつ。
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キチン:腸内で**N-アセチルグルコサミン(NAG)**に変換され、粘膜結合組織の修復を促進。
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テルペン類:抗菌・抗炎症・抗ウイルス・抗腫瘍・抗ヒスタミン作用を持つ。
5. 特に有効な2種のキノコ
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ライオンズメイン(ヤマブシタケ):胃炎・食道炎・消化管がんの伝統的治療に用いられ、日本の研究でも犬の腸内フローラを改善。
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チャーガ(カバノアナタケ):古くからロシアや北欧で胃腸疾患・がん治療に利用。
6. プロバイオティクスとFecal Transplant
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Saccharomyces boulardii(サッカロマイセス・ブーラルディ):酵母由来のプロバイオティクス。加熱に強く、リーキーガット改善に有効。
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犬のIBD・抗生物質関連下痢・ストレス軽減に有用。
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FMT(糞便微生物移植):健康な犬の腸内細菌を移植し、腸内環境・行動・肥満傾向まで変化させる可能性。
7. 栄養素とサポート成分
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L-グルタミン:腸上皮細胞のエネルギー源。腸粘膜再生を促進。
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食物繊維:短鎖脂肪酸を増やし、粘膜細胞の成長をサポート。
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N-アセチルグルコサミン(NAG):キノコ由来成分として腸粘膜結合組織を修復。
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ハーブ:リコリス(甘草)、ターメリック、ジンジャー、アロエ、プランタゴなど。
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特に甘草根は粘膜の炎症を抑制し、味の良さでペットにも与えやすい。
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8. 実践的な食事・サプリ戦略
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新鮮で加工の少ない自然食をベースに。
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「4R」を意識した補助:
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Repair(修復):ライオンズメイン+チャーガ+グルタミン+リコリス
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Reinoculate(再植):S. boulardiiまたはFMT
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Supportive nutrients:オメガ3脂肪酸(EPA+DHA)、フラックスシード、緑色野菜、スピルリナ、レシチン
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🔬 まとめ
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腸は免疫と健康の中心。
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リーキーガットは慢性疾患・がん・自己免疫・行動問題の根源。
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キノコ(ライオンズメイン・チャーガ)+プロバイオティクス+栄養補助で腸バリアを再建できる。
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「食を薬に」する統合的アプローチがペットの長寿と生活の質を高める。
