ペット腸サミット2025㉘
栄養と腸内健康による皮膚の治癒
Dr. Katie Woodley
序文:腸と皮膚のつながり
ペットの皮膚トラブルの多くは、外用薬やサプリメントだけではなく、食事の見直しで改善できる可能性があります。腸の健康と皮膚の健康は密接に関係しており、この「腸-皮膚軸(Gut-Skin Axis)」を理解することが鍵です。
第1章 腸-皮膚軸とは
腸内環境(マイクロバイオーム)は免疫応答や炎症反応を調節し、腸壁のバリア機能を維持します。
腸内細菌が産生する**短鎖脂肪酸(SCFA)**は、腸だけでなく皮膚の健康にも良い影響を与えます。
しかし、抗生物質の多用や低品質な食事により腸内細菌叢の多様性が失われると、「リーキーガット(腸漏れ)」が起こり、毒素が血中に流れ込み炎症が全身に広がります。これがかゆみ・脱毛・乾燥・皮膚炎などとして現れます。
要点:
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腸内細菌のバランスは皮膚の健康を左右する
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腸の炎症は皮膚の炎症(アトピーなど)に直結する
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かゆみがあるときは「腸」を疑うことも重要
第2章 皮膚に必要な栄養素
オメガ3脂肪酸の力
オメガ3は炎症を抑え、皮膚バリアを保護する必須脂肪酸です。不足すると皮膚乾燥やかゆみが起こります。
摂取源:
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冷水魚(サーモン・イワシなど)
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ペット用魚油サプリメント(品質に注意)
目安量:
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小型犬・猫(9kg以下)…1日約250mg
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大型犬は体重に比例して増量(必ず獣医に相談)
ビタミンEとアトピー性皮膚炎
ビタミンEは抗酸化作用により炎症を抑制し、アトピー性皮膚炎の症状を軽減します。
要点:
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オメガ3とビタミンEの組み合わせで炎症軽減
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健康な皮膚=適切な栄養+抗炎症サポート
第3章 食事が腸と皮膚に与える影響
加工食品の悪影響
加工されたペットフード(高炭水化物・酸化油脂)は腸内細菌バランスを崩し、小腸内細菌増殖症(SIBO)や脂漏性皮膚炎・にきび様皮膚炎を引き起こす原因になります。
これにより腸と皮膚の両方でバリア機能が低下し、慢性的な炎症状態になります。
処方食の落とし穴
腎臓病用や低タンパク処方食などは特定疾患に焦点を当てすぎて、必須アミノ酸や短鎖脂肪酸が不足する場合があります。その結果、免疫応答や創傷治癒力が低下する恐れがあります。
改善策:
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食物繊維の多い自然食で善玉菌を増やす
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毎日新鮮な水を十分に与える(デトックスと皮膚保湿に必須)
要点:
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加工食品や一部の処方食は腸の健康を損なう
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腸内環境を整える食物繊維と水分補給が重要
結論:皮膚疾患を根本から改善するために
腸と皮膚は一体であり、腸を整えれば皮膚も整う。
オメガ3脂肪酸・ビタミンE・繊維質を取り入れた自然食で腸内環境を回復させることが、慢性皮膚疾患の改善に最も有効です。
「皮膚の症状=体の中からのサイン」であり、外用ではなく内側からの治癒を目指すことが理想です。
