犬と猫におけるオゾン療法1
犬・猫・動物におけるオゾン療法の歴史と現在
副院長 清水 無空
2007年に日本医療・環境オゾン研究会(現在の学会)での獣医部会での講習をきっかけに犬や猫への応用が本格的に検討され始めました。2008年に従来の治療に反応しなかった難治性疾患がオゾン療法で改善した犬・猫の症例を日本で初めて報告しました。
2009年に東京で開催されたIOAメディカルセッションにおいて、国際学会で最初の犬猫におけるオゾン療法を報告しました。
2010年には、オゾン療法先進国であるキューバのオゾン療法研究所の視察を行ってきました。2015年には「獣医療にオゾンを生かす」が出版されています。
人や牛や馬などの大動物では、大量自家血液オゾン療法が主として行われていますが、犬や猫ではオゾンガスの注腸法や皮下注射がよく行われています。
北海道大学名誉教授の三浦敏明先生を初めとする研究者の報告により、オゾン療法の作用メカニズムが明らかになりつつあります。また2024年には犬での注腸法安全性試験の論文が発表されたことで、さらなる注腸法の応用が期待されています。
2020年頃からCOVID-19の影響で感染症対策としてオゾン、オゾン水に関する報告が急増しています。現在は、日本をはじめ、アメリカ、ブラジル、ヨーロッパ、中国、ロシアでの報告が盛んになっています。ドイツでは一部の疾患で保険適応となっており、特にブラジルでは2023年に人へのオゾン療法が認可されたことから、オゾン療法の報告が増加しています。
当院では、2007年にオゾン療法を開始した記録が残っており、17年間で約20,000件の症例を経験し、毎年学会報告を行ってきました。オゾン療法を開始当初は、小動物でのプロトコールがなく、オーナー様と動物にご協力頂き手探りで治療を行いました。人では大量自家血液オゾン療法(MAH)が主であったが、犬猫でのデータはなく、ガラスボトルを使えないことや、人と比べて動物の赤血球の耐性が弱いなどの制約があったことから、安全性、利便性からオゾンガスの注腸、皮下注射を用いることになりました。
オゾン療法はあらゆる西洋医学と補完・代替療法との併用が可能であり、相乗効果が得られることがわかってきました。近年では多血小板血漿療法(PRP)とオゾン療法の併用などが報告され、整形外科、リハビリや再生医療分野との連携が今後盛んになると考えられています。オゾン注腸法は、腸内細菌に影響を与え、生活習慣病や抗加齢作用に関する報告やがんの補助療法としても重要な役割が期待されます。
高齢ペットの割合が増えている現在は、薬を使わずに、QOLを高めるオゾン療法が治療に欠かせない存在となっています。これからも多くの動物のご家族、飼い主様、動物病院、医療に貢献できるようにオゾン療法の研究、啓蒙普及に努めて参りたいと思います。