犬のアレルギー⑤

レイチェル・マー博士は、西洋医学と中医学(東洋医学)を組み合わせた「統合医療」の視点から、犬のアレルギーに対するアプローチを解説しています。

 

記事タイトル:中医学と西洋医学の融合——統合医療で愛犬のアレルギーに立ち向かう

  1. 中医学から見たアレルギーの正体

中医学では、体はエネルギー(「気」)の源であると考えます 。アレルギーは、体内のバランスが崩れ、外敵から身を守る防御機能(衛気:ウェイチー)が低下した隙に、外部からの病原体が侵入することで起こります 。

  • 原因となる病原体: 主に「風(ふう)」と「熱(ねつ)」が関与しています 。
  • 影響を受ける臓器: 特に「肺」や「肝」がこれらと戦う中心となりますが、湿気を嫌う「脾(ひ)」などの臓器のバランスも重要です 。
  1. 食事による「熱」の管理

アレルギー症状(赤みや痒み)は体内の「熱」の表れであり、食事は「熱」を生む大きな要因となります 。

  • ドライフードの影響: 乾燥したキブルは中医学でいう「風」と「熱」を体に追加してしまいます 。
  • 推奨される食事: 新鮮な食材(フレッシュフード)は体が本来持つ温度を保ちやすく、冷却効果があります 。
  • 食材の選択: 牛肉やラム肉よりも、魚や緑黄色野菜など「冷却性(Cooling)」のあるタンパク質や食材を選ぶことが推奨されます 。
  1. 統合医療による治療アプローチ

マー博士は、中医学だけに固執せず、西洋医学の利点も取り入れた治療を行っています 。

  • 西洋医学の役割: 激しい炎症や感染(二次的な皮膚炎)がある場合は、まず抗生剤などの西洋薬を使って、ペットを早期に快適な状態にします 。
  • 中医学の役割: 鍼(アキュパンクチュア)は神経や血管を刺激して体を鎮め、過剰な反応を抑えます 。漢方薬(ハーバル)は「毎日の鍼治療」のような役割を果たし、体質を根本から整えます 。
  1. 飼い主への重要なアドバイス

アレルギー管理において、博士は以下のポイントを強調しています。

  • 早期受診とプロの判断: ネットの情報に頼って短期間に何度も食事を変えたり、自己判断でサプリメントを乱用したりすることは、かえって害になることがあります 。
  • 長期的な視点: アレルギーは一朝一夕で治るものではありません。数ヶ月から数年単位で、根気強くケアを続ける覚悟が必要です 。
  • 予防と先回り: 毎年決まった時期に悪化する場合は、症状が出る前に(例えば春が来る前に)鍼治療やケアを再開する「先回り」の対策が有効です 。

 

記事のまとめ

「アレルギー治療は、飼い主と獣医師が信頼関係を築き、時間をかけて一歩ずつ進むプロセスです。西洋医学で火を消し、中医学で火の出にくい体を作る。この両輪が愛犬を痒みから解放する鍵となります。」