犬のアレルギー⑥
このセッションでは、シェリース・ロス博士が、アレルギーを持つ犬に併発しやすい皮膚感染症に対し、抗生剤(抗生物質)に頼りすぎない管理方法について解説しています。
記事タイトル:抗生剤に頼らない皮膚ケア——アレルギー犬の感染症を管理する新しいアプローチ
- はじめに:なぜ「脱・抗生剤」が必要なのか
アレルギーを持つ犬は皮膚のバリア機能が弱いため、細菌や真菌(マラセチアなど)による二次感染を繰り返しがちです。しかし、安易に抗生剤を使い続けると、薬剤耐性菌を生み出すリスクがあり、将来的に本当に必要な時に薬が効かなくなる恐れがあります。
- 「バリア機能」の修復が最優先
アレルギー犬の皮膚は「レンガ壁の目地が剥がれた状態」に例えられます。感染症を叩くだけでなく、この壁を修復することが根本解決に繋がります。
- セラミドと脂質: 皮膚のバリアを構成する成分を補うことで、アレルゲンや細菌の侵入を防ぎます 。
- 炎症のコントロール: 痒みそのものを抑えない限り、犬は掻き壊してバリアを破壊し続け、新たな感染を招きます 。
- 抗生剤の代わりとなるツール
感染の初期段階や軽度の症例では、飲み薬の抗生剤ではなく、以下の局所療法が有効です。
- 薬用シャンプーと拭き取り(ワイプ): クロルヘキシジンなどの殺菌成分を含む製品を正しく使用することで、皮膚表面の菌の数を安全に減らすことができます 。
- バイオフィルムへの対策: 細菌が作るバリア(バイオフィルム)を物理的に取り除くことが重要です 。
- プロバイオティクス(善玉菌): 皮膚表面のマイクロバイオーム(細菌叢)のバランスを整え、悪玉菌の増殖を抑えます 。
- 早期発見とバーチャルケアの活用
皮膚が真っ赤になったり膿んだりする前の「早期の小さな変化」に気づくことが、強い薬を使わずに済む鍵となります。
- 赤み・臭い・ベタつき: これらは感染の初期サインです。この段階で局所的な洗浄などのケアを行うことで、重症化を防げます 。
- 遠隔診療のメリット: 病院へ行くストレスを避けつつ、初期段階で獣医師のアドバイスを受けることは、心理的・経済的な負担軽減にもなります 。
- 飼い主へのメッセージ
博士は「抗生剤は魔法の杖ではない」と述べています。
- 全身管理: 食事、環境管理、適切なグルーミングを組み合わせ、犬自身の免疫と皮膚バリアを強化することが、最も持続可能な感染症対策です 。
- 継続的なケア: 症状が消えたからといってケアをやめるのではなく、良い状態を維持するためのメンテナンスが不可欠です 。
記事のまとめ
「痒みのサイクルを断ち切るには、薬で菌を殺すだけでなく、皮膚のバリアを育てる視点が欠かせません。日々のブラッシングや拭き取りといった『地道なケア』こそが、愛犬を抗生剤の連用から救う近道となります。」
