猫の関節炎

中高齢の猫が最近動かない、元気がない、触ると怒りっぽいなどの症状はありませんか?

猫の関節炎の可能性があるかもしれません。

 

猫の変形性関節症(関節炎)

1. 【疾患の概要】
猫の変形性関節症は、慢性的に関節軟骨が摩耗・変性し、関節周囲の骨や滑膜に病的変化を生じる疾患です。かつては「犬ほど多くない」とされていましたが、近年の研究では高齢猫の60%以上に関節変性があるとされ、非常に一般的な疾患と考えられています。

 2. 【好発部位】
肩関節

股関節

肘関節

膝関節

背骨(特に腰椎や仙腰部)

 3. 【原因】
■ 原発性(加齢性)
加齢による軟骨の摩耗(高齢猫)

■ 続発性(基礎疾患あり)
外傷(骨折、脱臼などの既往)

股関節形成不全、膝蓋骨脱臼など

肥満による関節負荷

遺伝性疾患(例:メインクーンの股関節異形成)

 4. 【臨床症状】
猫は痛みを隠す動物のため、「歩き方が変」よりも行動変化で気づかれることが多いです。

 行動的サイン:
高い場所に登らなくなる、ジャンプを避ける

トイレに行きづらくなる(粗相が増える)

寝てばかりいる、活動性の低下

毛づくろいの減少(特に後肢や腰)

怒りっぽくなる、触られるのを嫌がる

歩き方が硬い、ぎこちない(特に寝起き)

 5. 【診断】
身体検査・触診:関節の硬直、痛みの誘発、筋萎縮の確認

X線検査:骨棘(osteophyte)、関節隙狭小、関節周囲の骨硬化

CT/MRI(重度や詳細評価時):脊椎病変や軟部組織の確認

※ 軽度のOAではX線で明確な所見が出ないこともあります。行動観察が診断のカギ

 6. 【治療】
1)内科療法(疼痛管理)
ソレンシア®(Solensia)=フルネヴタマブ(frunevetmab)

NGF(神経成長因子)に対する猫専用の抗体治療薬

月1回の皮下注射で、痛みを大きく軽減

高齢猫・NSAIDsが使えない猫に特に有用

NSAIDs(例:メロキシカム)

慎重な投与が必要(腎機能を必ずモニター)

長期投与時は週1回程度に減量することが多い

トラマドール(まれに使用されることあり)

鎮痛効果に個体差、猫での服用困難あり

2)補助療法・サプリメント
オメガ-3脂肪酸(EPA/DHA)

グルコサミン・コンドロイチン

MSM(メチルスルフォニルメタン)

UC-II(非変性Ⅱ型コラーゲン)

抗酸化物質(ビタミンE、セレン)

※ 食事やおやつからの摂取が現実的。市販の高齢猫用関節サポートフードも有用。

3)生活環境の改善
段差をなくす/スロープを設ける

トイレの縁を低くする

暖かく快適な寝床を用意

爪とぎ・上下運動の補助具を減らす

4)鍼灸治療・オゾン療法

痛みをとったり、機能を維持し、血流を改善し、体内の抗酸化物質を増やすことで、進行を遅らせます。

甲状腺機能亢進症がある場合には、治療ができないことがありますので、ご相談ください。

 

7. 【予後と管理】
完治は望めませんが、疼痛管理と環境改善でQOLは大幅に向上

早期発見・早期介入で進行を遅らせることができます

飼い主が「高齢だから」と見逃しがちなサインを積極的に評価することが重要です