真菌と癌2
東京慈恵会医科大学皮膚科学講座の研究グループは、足白癬(水虫)と足底メラノーマ(悪性黒色腫)の発生に相関があることを発見しました。
研究の背景と目的:
メラノーマはメラノサイト由来のがんであり、日本人では特に足底に発生するケースが多いことが知られています。これまで、足底メラノーマの発生要因として物理的刺激が考えられていましたが、陸上競技選手に多発するとの報告がないことから、この仮説に疑問が持たれていました。一方、ヘリコバクター・ピロリ菌の慢性感染が胃がんを引き起こすことが知られているように、白癬菌の慢性感染である足白癬が足底メラノーマの発生に関与している可能性が考えられました。そこで、足白癬と足底メラノーマの関連性を調査することを目的としました。
研究方法:
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対象者:
- 足底メラノーマ患者30例(メラノーマ群)
- 足底のメラノーマ以外の皮膚病変を有する患者84例(非メラノーマ群)
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診断方法:
- 全患者の足底を顕微鏡検査し、白癬菌の有無を確認。白癬菌が検出された場合、足白癬と診断。
研究結果:
- メラノーマ群の60.0%が足白癬に罹患。
- 非メラノーマ群の29.8%が足白癬に罹患。
非メラノーマ群には足白癬の症状で受診した患者も含まれていたにもかかわらず、メラノーマ群の方が有意に高い割合で足白癬に罹患していました(オッズ比3.540、P = 0.003)。さらに、多変量解析でも足白癬と足底メラノーマの有意な関連が確認されました(オッズ比4.285、P = 0.002)。
結論:
足白癬が足底メラノーマの発生に関与している可能性が示唆されました。この発見により、足白癬の治療や予防が、これまで困難とされてきた足底メラノーマの予防につながることが期待されます。研究グループは、今後、白癬と発がんの関連を分子レベルで解明することを目指しています。
2024 年 5 月 6 日 Journal of Dermatology
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